-職&食&触-


                                     KEY









今日も暇だな・・・。
何でコンビニは24時間営業なんだ・・・?
今は夜中の2時だが・・・こんな夜遅くに来る客なんかまともな人間じゃないね。
ヤンキー・オタク・夜型人間・・・etc・・・。
どれもおかしな奴ばっかりだ・・・。
まったく・・・早く帰りたいぜ・・・。
あれ? 俺、何時までシフト入ってたっけ?




腹が減った・・・。とてつもなく腹が減った・・・。
どっかに残飯でも落ちてないかな・・・って、こんないかにも閑静な住宅街にいきなり残飯が落ちてるのもどうかと思うが・・・。
ん・・・? 言ったそばから何か落ちてる・・・。
ご飯か? おかずか? それともデザートか?
・・・なんだ・・・なんだよ・・・食い物じゃないじゃん。
ただの折れた包丁じゃん。
こんなの食えないって!
いくら鋼の歯を持ってる俺だって食えないよ。
・・・でも、考え方を変えれば、これで食べ物を捌くことができるな・・・。
って・・・折れてるから無理か?
まぁ・・・いいや。昔から「備えあれば憂いなし」とか言うよな。
持ってて損はないよな?




あー・・・ふらふらする・・・。
こりゃ、貧血だな・・・。しかも、視界がテレビの砂嵐みたくなってるぞ・・・。
、相当きちゃってる? そろそろやばいかな・・・?
俺、明日まで生きてるかな・・・?




朝6時までシフト入ってたが・・・14時間労働だぞ・・・。しかも、休憩時間が14時間で30分だけどか・・・。店長め・・・俺を殺す気か?
労働基準法違反してない? 法律無視してるよね?
どんだけ人材不足なんだ。このコンビニ・・・。
一応、全国チェーン店のはずなんだけど・・・。
あー・・・客も来ないし・・・。適当にサボろうか・・・。




この包丁・・・。ただ重いだけだな・・・。
今さら気付いた・・・。馬鹿か。俺。
あー・・・何か落ちてないかなー・・・。
俺も男だ。男としてのハバを広げようじゃねーか。
もう…食い物じゃなくてもいいぞ。
MONEYなんか大歓迎さー♪
・・・なんかないかなー・・・。
・・・・・・・・・・・・・ん?
あそこに光るものが・・・。
何だありゃ・・・うーん・・・。
お金?MONEY?
・・・・・・ただのアルミホイルかよっ。
うーん・・・。
お・・・ちょっと待て?
これって使えるよな?
折れた包丁の先に、アルミホイル被せて・・。
今は夜だし・・・あんまり細かいとこまで見えないから、ちゃんとした包丁に見えるよな?
よし・・・いっちょやってみっか。




あれ・・・? いつの間にか気失ってた・・・。
ふぅ・・・まだ頭がクラクラするが・・・さっきほどじゃないな。
おーっと・・・あそこにいい餌が・・・。
おいしそうなあの体・・・。
いただくとするかな。





んー・・・よく寝たな〜・・・。
やっぱ、仕事はサボるに限るな。
っていうか、人間テキトーが一番♪だな。
はぁ〜・・・って、客がいやがった・・・。
どーしよ、俺。サボってんのバレバレじゃん?
バイトやめさせられるかな・・・?
でも、悪いのは店長だろ? 寝ちゃうのも無理ないって。
こんなに長い時間シフト入れやがって・・・。
はぁ〜・・・次の仕事見つけるの大変だなー・・・きっと。
・・・でも、この客がこのこと言わなければ平気だよな?
これからイメージアップでいくか・・・。
その一歩として・・・一言。

「いらっしゃいませ〜(*^▽^*)」

・・・これでいいかな?




さっきまで・・・店員寝てたが・・・
大丈夫か? この店。
つーか・・・
店長しっかりしろよ。
何やってんだよ。
でもまぁ・・・これから俺がやろうとしていることをやるには楽かもな。
あー・・・痒い。
・・・そんなことはおいといて・・・と。
さて・・・いっちょやるか。
「おいっ! 金出せ。金っ!」




あー・・・おいしかったなー・・・っと。
お・・・目の前にもうまそうな餌が・・・。
いただくとするか・・・。




・・・?何なんだ、こいつ。
なんか、光ってるもの突き出してるが・・・包丁か?
え・・・コンビニ強盗? 現金強盗?
いや〜。外見、ナヨナヨしてるように見えるけど・・・よくやったねェ・・・。
って、俺、すごい冷静だよね。
でも、包丁にしては・・・皺寄ってない?
・・・っていうか、これ、アルミホイル?!
あははは。こいつ、ウケるわぁ。・・・んでもって、何も関係ないが・・・なんか、痒い。




店員、びっくりしてる? ・・・って、顔が笑ってるよ?!
まさか、アルミホイル包丁ばれた?!
でも、ここまできちゃった以上、MONEYだけは欲しい・・・。
そして、逃げたい♪ 防犯カメラ長い時間映ってるのはよくないし。
よし、ここは急かすか・・・。

「さぁ!早くっ! 金出さないとぶっ殺しゅぞっ!」

・・・やっちまった・・・。




こっちもおいしかった・・・けど・・・やっぱ、さっき頂いたほうがおいしかったな。
もう一度頂くとするか・・・。




・・・え。今、舌噛まなかった? この人。
やっぱ、外見通り、チキンだったみたいだ・・・。
さーてと・・・どうすっかなー。警察呼ぶのもいいけど、自分で撃退した方が、かっこいいよね? 腕には自信あるし。
さて・・・覚悟はいいかなぁ・・・。
あ゙―!!!!痒い。




やっちまったが・・・俺、カミカミ症候群なんだよ。小学校の学芸会のときも、高校受験の面接のときもかんじまったくらいだ・・・。なんで、大事な時に限って噛んじまうんだ。・・・って、自己嫌悪に陥ってしまったが・・・って、なんか飛んでくる! 猛スピードで飛んでくるよ?! え?! 今のままじゃ、絶対避けられないよ?




あー・・・風が気持ちいいな・・・やっぱ、常に楽しなきゃね。
目的地発見っ!
目的地着陸まで3・・・・・・・・・2・・・・・・・・・・・・1・・・・・・・・・




















「あ。警察ですか? すいません。パトカー1台、コンビニまでお願いします。何かって? 強盗です」

目の前に、1人の男が伸びていた。きっと、頭に星がチカチカしているだろう。
長い夜だったが、もうすぐ朝だ。
さて・・・店長にも連絡するか・・・きっとびっくりするだろうな。
お・・・?手から血が出てる・・・? いや、蚊だった・・・。いつの間にか蚊を潰してしまっていたようだ。そういえば、さっきから痒かった・・・これのせいか。

「そういえば、蚊が一番好む血液型ってあるのか?」

俺はそんなことをぶつぶつ呟き、考えながら警察が来るのを待った。






fin.






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